リスト処理関数

ここでは，以下に挙げたリストを扱う基本的な関数を説明する．

car,cdr
cons
null?, list?, pair?
set-car!, set-cdr!
append
list

car,cdr

それぞれリストのcar部,cdr部を返す関数．

	(define x '(1 2 3 4))
	> (car x)
	1
	> (cdr x)
	(2 3 4)

carはリストの先頭の要素，cdrはリストの先頭の要素を除いたリストを返すと考えてもよい．これらに加えて，2番目の要素を返すcadr，3番目以降要素を含むリストを返すcddr，先頭の要素がリストであるときに，その先頭の要素を返すcaar などの関数など，4つまでのaかdを含む関数がシステムに用意されている．

	> (define x '((1 2 3) 4 5 6))
	x
	> (car x)
	(1 2 3)
	> (cdr x)
	(4 5 6)
	> (cddr x)   ;; = (cdr (cdr x))
	(5 6)
	> (cdddr x)  ;; = (cdr (cdr (cdr x)))
	(6)
	> (cddddr x) ;; = (cdr (cdr (cdr (cdr x))))
	()
	> (cadr x)   ;; = (car (cdr x))
	4
	> (caar x)   ;; = (car (car x))
	1
	> (cdar x)   ;; = (cdr (car x))
	(2 3)
	> (cadar x)  ;; = (car (cdr (car x)))
	2
	> (caddar x) ;; = (car (cdr (cdr (car x))))
	3

cons

2つの引数をとり，第一引数をcar部，第二引数をcdr部にもつリストを返す関数．システムは新しいconsセルを一つ用意して，そのcar部，cdr部がそれぞれ第一，第二引数を指し示すようにする．

	> (define x '(1 2 3))
	x
	> (define y 0)
	y
	> (define z (cons y x))
	z
	> z
	(0 1 2 3)
	> (car z)
	0
	;; 関数eq?は，2つの引数が同じconsセルを指している場合には#tを返す
	> (eq? (cdr z) x)
	#t
	;; 第二引数がアトムである場合の例
	> (cons 'a 'b)
	(a . b)
	;; 第二引数がドット対である場合の例
	> (cons 'a '(b . c))
	(a b . c)

null?, list?, pair?

これらは，1つの引数をとり，真偽値を返す述語である．

null?

引数が空リスト(null list)かどうかを判定する．

	> (null? '())
	#t
	> (null? '(a))
	#f

list?

引数がリストかどうかを判定する．

	> (list? 'a)
	#f
	> (list? '(a b))
	#t
	> (list? '(a . b)) ;; 最後の要素がnullでない場合，list?は#fを返す．
	#f
	> (list? '()) ;; 空リストもリストである．
	#t

pair?

引数がドット対かどうかを判定する．

	> (pair? 'a)
	#f
	> (pair? '(a b))
	#t
	> (pair? '(a . b))	
	#t
	> (pair? '()) ;; 空リストはアトムであり，ドット対ではない．
	#f

set-car!, set-cdr!

それぞれ，第一引数にドット対をとり，そのcar部，cdr部を第二引数で指定されたデータに置き換える関数である．これらの関数では，既にあるデータを書き換えるため，副作用が起きることに注意が必要である．

	> (define x '(1 2))
	x
	> (define y '(3 4 5))
	y
	> (define z (cons x y))
	z
	> z
	((1 2) 3 4 5)
	> (set-car! x 0) ;; xのcarを0に置き換える．
	(0 2)
	> x
	(0 2)
	> z
	((0 2) 3 4 5)	 ;; zのcarはxであり，zもset-car!の影響を受ける．
	> (set-cdr! y '(2 1)) ;; yのcdrを(2 1)に置き換える．
	(3 2 1)
	> y
	(3 2 1)
	> z
	((0 2) 3 2 1)	 ;; set-car!と同様にこの場合も副作用がある．

(set-cdr! x x)を実行すると，xは無限巡回リストとなり，システムは停止しなくなる．

	> x
	(0 2)
	> (set-cdr! x x)
	(0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ..... ;; 強制的に実行を中断しない限り止まらない．

append

引数として与えられた(任意個の)リストを連結したリストを返す関数．appendは新たなconsセルを用いて，連結されたリストを新たに生成するため，副作用はない．

	> (define x '(1 2))
	x
	> (define y '(3 4 5))
	y
	> (define z '(6 7))
	z
	> (append x y z)
	(1 2 3 4 5 6 7)

list

引数として与えられた(任意個の)データを並べたリストを返す関数．副作用はない．

	> (define x 1)
	x
	> (define y '(2 3 4 5))
	y
	> (define z '(6 7))
	z
	> (list x y z)
	(1 (2 3 4 5) (6 7))